寒天と蕎麦。幸福な出会いでした。
新潟に大雪が降るころ、たくさんの職人さんが、恵那の地に寒天づくりにやってきます。ある日、その職人さんのひとりが、昼げの蕎麦をすすりながらつぶやきました。蕎麦は小千谷のほうがうめえな。彼の話によると新潟の小千谷では、蕎麦のつなぎに布海苔を使っている。そのためつるっとした舌ざわりと、ほんのり磯の香りが特長がある。 布海苔も寒天もおなじ海草を原料にしている。この話に触発され、試みに寒天をつなぎに蕎麦を打ってみると、これが文句なしにうまい。さきの職人さんも、この蕎麦なら小千谷にまけてねえ、とお墨付をくれました。
考えてみれば日本の伝統食である、蕎麦と寒天が相性が良くないはずがない。菓匠が羊羹につかう上等の寒天だからつるつるとした潤沢なテリと舌触りは当然のころ。寒風に晒して製造した天然寒天だから味もしまり。コシの強さもどこの蕎麦にもひけはとらない。
また乾めんにも都合がいい。寒天と蕎麦だから健康食として良縁。蕎麦処にあってだれも作らなかったのは不思議だが、えてして出会いの縁とはそうしたものか。みなさまとこの寒天蕎麦がよい出会いでありますように。